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#光と希望のみち

【第14回】伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.13 ギリシャと奈良をつなぐヘレニズムの華

2019-01-16

「光と希望のみち」展は、2016年5月にNY国連本部で始まり、7カ国8都市目の巡回先として、神話と東方教会の聖地であるギリシャへやってまいりました。

日希修好通商航海条約締結120周年記念事業キックオフ行事として、ビザンチン・キリスト教博物館で1月16日から開催されます(2月10日まで)。

開催場所のビザンチン・キリスト教博物館は、ギリシャ国会議事堂(旧王宮)やフランスやアメリカ、オーストリアなどの各国大使館、博物館が立ち並ぶアテネのメイン通り、ヴァシリシス・ソフィアス大通りにあります。

この博物館の二階の企画展ギャラリーにて、天平彫刻の最高傑作である東大寺の至宝を中心に、春日大社の舞楽面を加えた奈良の国宝・重要文化財46点が、写真作品として、ギリシャで初めて紹介されます。もとより同博物館では、日本をテーマにした企画展は、1914年の創設以来、初めてのことだそうです。

アテネの聖地の中の「平城京」

世界でも有数のキリスト教博物館の二階に、日本の神仏混交の聖地である「奈良」がすっぽり入ってしまったような、奈良の神秘的かつ聖なる雰囲気が、厳かな静けさを湛えています。

“Road of Light and Hope” at the Byzantine and Christian Museum, Athens

とりわけ大仏さまの作品がかけられた広間からは、アテネで一番高いリカヴィトスの丘上のアギオス・ヨルギオス教会が望まれ、神々を抱く天の玄関にいるような神妙な景観が開けています。

アクロポリスの丘と双璧をなす、標高227mのリカヴィトスの丘は、カラスの凶報により、女神アテナが落とした岩が山となったといわれますが、ギリシャも、日本と同様、多神教による汎神観の脈絡が自然と共に今も息づいているように思えます。

View from the terrace of the Byzantine and Christian Museum

女神アテナの岩山を眺めていると、山自体がご神体の奈良の三輪山を思い出します。頂上のヨルギオス教会は、元伊勢と呼ばれる檜原神社にも思えてきます。

ヘレニズム文化の華

もとより、仏像や仮面も、ギリシャの神々を喜ばす奉納像(アガルマ)を起源とすることから、天平彫刻に反映されたヘレニズム文化の影響を、古代の東西文化の交流の証として紹介する同展は、ギリシャへの「恩返し」のような趣旨を担っています。

ここでは、古代ギリシャの神々も、イエスキリストも、展覧会の中の仏陀も天部も菩薩も、伎楽面も舞楽面も、清らかな空気に包まれて、清涼感と静粛を湛えて共存しているような、平和そのものの調和があることを感じさるを得ません。

Main entrance of the Byzantine and Christian Museum

この調和のとれた平衡状態を目指していくのが「光と希望のみち」展の伝えるメッセージであり、そのモデルは1400年前に「和」を唱えた聖徳太子にさかのぼるものです。

アレクサンダー大王の東方遠征とともに、ヘレニズム文化が中央アジアへ伝搬し、仏像となって中央アジアからカシュガル、コータンまたはクチャ(〜トルファン)、敦煌、長安を通って奈良に伝えれらた「叡智」とは、こうした共栄共存の道に他なりません。

会場であるビザンチン・キリスト教博物館のアイカテリーニ・デラポルタ館長も、こうした共存の意義を発信するために、同博物館で、日本の仏像展を開きたかったそうです。物質的な世界の価値観では見えにくなってしまっているものの、世界の異なる宗教行事や宗教美術に結実されている共通の「光」があることを、このたびの展覧会で見せていきたいそうです。

東西文化の源流をつなぐヘレニズム文化の華麗な変遷を、ギリシャから奈良まで辿ることで、すべてが一つであり、皆つながっていること。皆それぞれがかけがえのない華であることを訴えていくのが、「光と希望のみち」展の趣旨になり、それを奈良の世界遺産や国宝・重要文化財の写真や映像作品、講演会で見せていくものです。

日希修好通商航海条約締結120周年記念式典

1月14日の記念式典では、ビザンチン・キリスト教博物館のアイカテリーニ・デラポルタ館長、ゲオルゲ・カトロウガロス・ギリシャ外務副大臣、清水康弘駐ギリシャ日本大使がご挨拶されましたが、ご挨拶の中で「光と希望のみち」展につきましても、「日本とギリシャの古代からのつながりを示す最高の展覧会」とのお褒めの言葉を頂戴いたしました。

それは、まさしく奈良の1400年の伝統力が培ってきた芸術の力、そしてシルクロードを経て、東西文化の融合の結果花開いた、日本独自のヘレニズムの華への賞賛にほかなりません。

His Excellency Ambassador of Japan to Greece, Mr. Yasuhiro Shimizu

なお1月29日(19時30分〜21時)には、ビザンチン・キリスト教博物館での講演会も予定しています。詳細は、ビザンチン・キリスト教博物館のサイトをご参照くださいませ。

http://www.byzantinemuseum.gr/en/?nid=2371

ギリシャ展の様子は、また第二弾をご報告したいと思います。

末筆ながら、この度の展覧会開催のために、ご尽力いただいた関係各位に、心から感謝を申し上げたいと存じます。

アテネより

2019年1月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ代表

Text by Miro Ito /Media Art League. All Rights Reserved.

“Road of Light and Hope – Voyage of the Hellenism to Japan”

Photographs and Text by Miro Ito

Byzantine and Christian Museum

場所:Leoforos Vasilissis Sofias 22, Athina 106 75, Greece

期間: 16th – 28th January, 2019

共催:Byzantine and Christian Museum、在ギリシャ日本大使館、日本カメラ財団、メディアアートリーグ

後援:日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー

撮影協力:東大寺、春日大社、奈良国立博物館

WEBサイト:http://www.byzantinemuseum.gr/en/

更新:2019年1月26日

【第13回】伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.12 地球という<いのち>を思いやる

2018-10-30

Poster:”Road of Light and Hope”, Museo Nacional de las Culturas del Mundo, Mexico

共感の連鎖

災害や疫病、戦争や貧困という世界の課題以外に、地球温暖化や環境汚染といった差し迫った問題は、もはや私たちを待ってはくれません。地球を一つの生命として捉え、いのちとして共感し合い、地球を守らなければならない時代がやってきました。

世界の未来に答えるために、思いやりを持って、行動すること_。私たち自身が問題の一部ならば、同時にわたしたちこそが、解決の一部なのです。私たちひとりひとりの地球への思いやりは、小さなさざ波にすぎないにしても、音叉のように、その波動を、世界全体に広げていけるのではないでしょうか。

大地に小さな石が存在しているように、宇宙に星が存在しています。石も星も、人も、動植物も、仲間としてお互いを補い合い、支え合っているのです。この世界観は、東西に共通する普遍性をもつものです。

「1片の木を割っても、私はそこにいる。一つの石を持ち上げても、そこに私を見出すであろう」(イエスの言葉「トマス福音書」より)

極小の塵から、極大の宇宙までを一体的に捉える、東西に共通する叡智こそが、「地球」といういのちへの思いやりのある、行動の規範だと考えるところです。

 

全ては「生き物」としてひとつである

さて、在外公館や国際交流基金からのお力添えにより、展覧会「光と希望のみち」(*)にちなみ、日本国と諸外国の周年行事や文化機関において、大変光栄にも、スピーカーとして招かれる機会が増えてまいりました。

(*共催:在外公館、国際交流基金、メディアアートリーグ、日本カメラ財団ほか、後援:日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー)

2年前のストラスブール欧州評議会でのスピーチからはじまり、トロント国際交流基金、シカゴ大学、リオデジャネイロ「日本月間」オープニングイベント、そして来月はメキシコシティへ_。

テーマは、東洋の華厳思想、すなわち西洋の新プラトン主義と共通する「すべては一つであり、一つはすべてである」ということ。そして「宇宙も、一つの<いきもの>であり、全てのうちに<共感>なる相互作用がある」(新プラトン主義)というものです。

奈良に残され、受け継がれているヘレニズム文化の影響を色濃く残す、日本の古代の有形・無形の世界遺産をテーマに、そうした東西間の<共感(シュンパティア[συμπαθεια])>を相互に喚起させるために、展覧会・映像上映およびレクチャー形式で、訴えていくものです。

1400年前に遡り、シルクロードを介して東西文化の源流をつなぐ傑出した国宝・重要文化財の写真作品を「証拠」として見せながら、私たちが「皆ひとつであり、すべてがつながっている」ことを伝える趣旨を担っています。

 

リオからメキシコシティへ

本年7月には、ブラジル日系移民110周年を記念し、リオ・デ・ジャネイロで開催された「日本月間」での写真展「光と希望のみち」では、記念行事のオープンングでレクチャーを行い、映像上映もさせていただきました。

行事の後には、列席されたアメリカ総領事から、<共感>の言葉をいただけたことが、貴重な収穫となりました。またリオ州立大学での体験も、東西文化の交流史を地球規模で示していくことの重要性につき、確信を強めてくれました。(※日本月間には、3週間半の開催中に、6万2000人の訪問客がありました。)

来月のメキシコシティでは、日墨外交関係樹立130年を記念するイベントが、メキシコ国立多文化博物館において開かれます。近年にない規模の大型日本文化紹介イベントが行われ、世界巡回展「光と希望のみち」も参加させていただきます。

11月8日の記念式典では、高瀬寧(やすし)メキシコ日本国大使、国際交流基金メキシコ日本文化センターの杉本直子所長に次ぎ、私もスピーチをさせていただく予定です。<共感>の輪が、これよりメキシコへも広がることを願う次第です(展覧会は12月3日まで)。

 

見えないものを見る

Poster : “Signs of the Intangible”, JIC Hall / Consulate-General of Japan in Chicago

 

一方、日加修好90周年を記念し、在トロント日本国総領事館のご後援のもと、5月から6月末までトロントの日系文化会館で開催された「隠し身のしるし(Signs of the Intangible)」展は、11月1日から、在シカゴ日本国総領事館広報文化センター(**)へと巡回させていただくことになりました(11月28日まで)。

(**共催:メディアアートリーグ、日本カメラ財団、助成:東京倶楽部、 後援:日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー)

同展は、日本の1400年の心体景観をテーマにした写真展です。

もともと超自然的なものへの奉納として芸術が始まり、見えない自然の力(カミ)が仏教の受容とともに、形を得て仮面となり、仏像・神像となり、さらに身体芸術となりました。1400年の歳月とともに、高度に洗練され、磨かれ、深化さえもされて、能から前衛舞踏に至るまでの、日本独特の心体文化を形づくってきました。

そして仮面が見えないものと見えるものをつなぐ「境」であるならば、身体は、神仏集合の1200年の伝統において、悟りを目指す修行の「場」と考えられてきました。

こうした日本の奉納の身体芸能の独自の歴史については、ノースウェスタン大学の招待により、11月16日の特別レクチャーで、お話させていただく予定です。

私の試みは、過去と未来をつなぎ、東西文化の「橋掛かり」をつくることですが、講義の中では、身体を通して、私たちひとりひとりが、生き生かされているという<永遠なるもの>とつながりうる心体文化について、語っていきたいと思います。

もとより有限ないのちは、宇宙の無限の生命循環の中で、永遠なものへと帰ってくわけです。現実世界では、心身一如を通して、永遠なるものとつながることで、見えないもの、見えるものも、すべてがつながっていることに、気づくことができるのではないでしょうか。

在シカゴ総領事館JICホールでは、11月13日午後6時より、伊藤直樹総領事からご挨拶をいただき、アーティストトークイベントを行います。

また伎楽をバレエとして復興させた「伎楽バレエ」(踊り手:春双)も、シカゴでは二度目の発表になりますが、トロント、リオ、そして11月8日のメキシコに続き、披露させていただく予定です(芸術監督:伊藤みろ)。

✨✨✨✨✨

11月にシカゴ、そしてメキシコティへお越しいだだける際には、ぜひご来場いただけるようでしたら、大変幸せに思います。

東西の交流の歴史とつながりながら、地球への思いやりを乗せて

(文中敬称略)

2018年10月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ

Text by Miro Ito /Media Art League. All Rights Reserved.

【第12回】伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.11「トロントからリオへ:平和への祈りと巨像の道」

2018-08-20

(Mês do Japão 2018 フライヤー)

トロントからリオへー平和への祈りと巨像の道

残暑お見舞申し上げます。

本年は、長崎の平和祈念式典に、国連のグテレス事務総長が初めて参列し、核なき世界平和への祈りが、国境を越えてさらに広がることが願われました。

私自身、マザーテレサが毎日唱えていたという「フランシスコの平和への祈り」を厳かに反芻しました。自らを「平和の道具」とならしめるための、祈りのことばです。

主よ、わたしをあなたの平和の道具としてください。 

憎しみのある所に、愛を置かせてください。

侮辱のある所に、許しを置かせてください。

分裂のある所に、和合を置かせてください。

誤りのある所に、真実を置かせてください。

疑いのある所に、信頼を置かせてください。

絶望のある所に、希望を置かせてください。

闇のある所に、あなたの光を置かせてください。

悲しみのある所に、喜びを置かせてください。

… … … …    … … … …

(以下続く[*])

さて、6月のトロント日系文化会館でキックオフとなった新しい世界巡回展「隠し身のしるし (Signs of the Intangible) 」に続き、7月には外務省の招待により「ブラジル日系移民110周年記念事業」のため、トロントからリオデジャネイロを訪問しました。

中央郵便局の歴史的な建物が文化センターとなった「リオ郵便局文化センター (Centro Cultural Correios) 」を会場に、「日本月間 (Mês do Japão)」が行われ、私は、5カ国6都市目の展示となった世界巡回展「光と希望のみち(Road of Light and Hope) 」を開催させていただきました(共催:リオデジャネイロ日本国総領事館、国際交流基金、日伯文化協会、メディアアートリーグ、日本カメラ財団、後援:郵便局文化センター、110周年記念委員会、日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー)。

リオの「日本月間」は、ブラジル三大紙聞の一つ「Segundo Caderno」紙で大きく取り上げられ、オープニングイベントには、合計300人くらいの方々にお集まりいただきました。

東大寺や春日大社、奈良国立博物館の特別協力のもと、7年がかりで撮り下ろした極めて貴重な奈良の国宝・重要文化財を紹介する写真作品シリーズを前に、星野芳隆総領事、日伯文化協会会長、郵便文化センター館長からご挨拶をいただきました。その後、私のショートレクチャー&映像上映に加え、私自身が芸術監督を務め、伎楽をバレエとして復活させた「伎楽バレエ」 (踊り手:春双) も、会場に華を添えてくれました。

このイベント「日本月間(Mês do Japão)」へは、7月4日から29日までの3週間半の間に、6万2000人が訪れてくださいました。

 

二つの巨像

さてリオデジャネイロといえば、標高710mの「コルコバードの丘 (Morro do Corcovado)」の上に、両手を広げて聳え立つ「キリスト像 (Cristo Redentor)」が有名です。

奈良の大仏さまが”復興”のシンボルならば、リオのキリスト像は”独立”のシンボルです。歴史を紐解くと、かつての宗主国ポルトガルは、ナポレオンの侵攻により1808年から14年間、ブラジルのリオデジャネイロに遷都していた時期がありました。その後、ナポレオンが倒れたのち、リスボンに国王が戻り、その余波の中で1822年、ブラジルが独立を果たしました。その独立100年を機に工事が始まり、1931年に高さ38メートルのキリスト像が建てられました。

その威容は、リオの人々の心の拠り所であり、世界中の訪問客で溢れかえっています。もとより巨像には、奈良の大仏さまと同様、宗教の垣根を越えて、人々の心をつなぐ役割があるように思われます。祈りにおいて、皆が一つになれるからです。

祈りの内容は十人十色ながら、冒頭の「フランシスコの平和への祈り」は、「慰められるよりも慰め、理解されるより理解し、愛されるよりも愛することを求めさせてください」と続きます。そして結句では「与えることで人は受け取り、忘れられることで人は見出し、許すことで人は許され、死ぬことで人は永遠の命に復活する」と結ばれます[*] 。

まさに「愛されるよりも愛すること」「許すことで許されること」にこそ、平和への道があるように思います。そして言葉の上だけではなく、人々の行為がその種となることで、キリストや仏陀の心とも一体となれるように思うのです。

巨像には、自らが平和の種となれることを示し、光となれること(自灯明)へと導く道としての力があるように思われます。

 

巨像の道(グレイトブッダロード)

さて、リオ州立大学での特別講義のテーマは、昨年のシカゴ大学での講義と同様、盧舎那大仏が伝来した「シルクロード叡智の道」についてでした。

アジアの巨像を含む石窟仏教寺院の伝統は、1世紀頃のバーミアン(バクトリア地方)からカシュガルへと抜け、タクラマカン砂漠とタリム盆地の上方を西へ進む天山南路を、クチャ(キジル) 経由で、トルファンに至り、敦煌、雲崗、龍門において開花しました。その西域からの伝統が、唐王朝のときに奈良へと繋がった道を「叡智の道」として紹介しました。

もとより大仏さま造立の背景にある叡智とは、華厳の教えが説く「皆がひとつ」であり、「誰もがかけがえのない華である」というものです。その華厳の心を、「日本月間」を飾るオープニングのレクチャーにおいて、大仏さまや伎楽面の映像作品を通して訴えさせていただきました。イラン出身の移住者の女性からは、「皆がひとつであり、それぞれが多様な華であること」はブラジルの心と同じであり、大いに賛同いただきました。

またリオ州立大学での講義は、ブラジルの若者たちに、予想以上に支持される好結果となりました。1400年前の多文化主義を体現したかのような東大寺の伎楽面・春日大社の舞楽面は、500年以上かけて、ブラジル文化に花開いた多民族主義と重なり合う部分があるためか、1時間半の講義の後は、1時間以上も学生たちと懇談をしました。

盧舎那大仏を「日本の復興の象徴」として紹介するSegundo Caderno紙 (2018.7.4)

聖徳太子が思いみた「和」の心を体現する伎楽面や舞楽面。そして聖武天皇が生きとしいけるものすべての幸せを願って、延べ260万人の国民とともに造立した大仏さま。この夏は、国策として多様性と包容性を掲げるカナダからブラジルへ渡航し、二つの多文化主義の国々で、実に多くの方々にご賛同いただいた体験が、かけがえのない収穫となりました。

この後「光と希望のみち」展は、「日墨外交関係樹立130周年」を記念してメキシコシティを訪れる予定です。

奈良の人類遺産の普遍的な訴求力を通して、平和への祈りの道であり、叡智の道を、引き続き世界に発信していきたいと改めて強く誓う次第です。

さまざまなご支援を与えてくださった関係各位の皆様のご尽力には、心から感謝申し上げ、 平和への祈りを込めて、残暑のご挨拶に代えさせていただきます。

2017年8月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ

Text by Miro Ito/Media Art League. All Rights Reserved.

注[*] Wikipediaより抜粋

【第9回】伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.8「伎楽の夢:大きく ゆっくり 遠くをみる」

2018-01-01

Gigaku Mask (Karua), 17th century (Photo by Miro Ito)

 

2017年は、世界の分断化がさらに進んだ年でした。

世界が一つにならなければ、明るい未来は、私たちを待ってくれません。

差別や敵愾心、憎悪や恐れが引き起こす紛争に次ぐ紛争の中に、平和への夢ははかなくも消え去ってしまいます。

そんな中、私たちひとりひとりが世界の一体性のために貢献できるという意識や理想を鼓舞していかなければなりません。そうした思いから、私は昨年、「ユニバーサリティ」や「ユニバーサリズム」をキーワードに、名門シカゴ大学やデポール大学で、アメリカの学生たちに東大寺の天平彫刻に託された「東西の叡智の道」について語らせていただきました。

「ユニバーサリズム」とは、宗教的な意味では「万人救済」の思想です。広義では、すべてが一つであるという普遍的な理念を元に、お互いの差異を認め合い、尊重し合う理想といえます。

この理念を端的に示しているのが、1400年以上前に日本に伝来した伎楽や舞楽などの、シルクロードの芸能です。聖徳太子が奨励したといわれるのも、伎楽や舞楽の中に、異質な文化が豊かに共存しているからです。まさにアートの中に体現された「和」の心であり、ユニバーサリズムの粋といえるのです。

 

伎楽、舞楽とは

芸能として滅びてしまった伎楽は、ギリシア仮面劇を起源とするユーラシア最古の仮面劇といわれます。552年の仏教伝搬の頃、日本に伝来し、奈良時代以来、仏教行事として法隆寺や東大寺、西大寺、興福寺などで奉納され、仏教の興隆に大きく貢献したといわれます。その表情豊かな見事なフォルムの仮面群は、雄大なシルクロードの東西の交流史を今日に伝えるものです。

一方、海のシルクロード諸国の王朝芸能を集成させた舞楽は、宮中の芸能として、外国からの来賓への祝宴の場や、国家的な祭礼の際に演じられてきました。奈良時代より三方楽所(朝廷・南都・四天王寺)において伝承され、1500年の伝統を今日まで伝えています。

 

伎楽、舞楽が語るもの

一昨年の5月からNY国連本部で始まった世界巡回展「光と希望のみち(Road of Light and Hope)」は、共催者である日本カメラ財団と外務省のご支援を得て、ウズベキスタン芸術アカデミーやストラスブール欧州評議会・欧州の広場、トロント国際交流基金、シカゴ日本広報文化センターで開催してまいりました。東大寺の伎楽面や春日大社の舞楽面は、その魅力あふれるエネルギッシュな造形表現により、感嘆を以って迎えられました。

注目された点は、長く大きな鼻や皺で歪んだ顔、豊かな喜怒哀楽の表情も、それぞれの個性として、誇らしげに最大限に強調された顔だちです。それぞれのキャラクターが違った個性を持っていることにこそ、価値が見出せるのです。そのことで、世界がいかに豊かになっているかということに、仮面を通して、改めて気づかされるのです。

ちなみに胡国と呼ばれた「ゾグド国」は現在のウズベキスタンに当たる地域です。ウズベキスタンでは、4つのテレビ局のインタビュー取材を受け、メディアで広く報じられました。私が答えたのは、以下のポイントです。

ー伎楽がシルクロード伝来の1400年以上前の造形であること。

ー仮面が日本にしか残されていないのは、日本が歴史的に他国の侵略を受けなかったこと。

ー皆が同じであるという一体性の意識を訴求するものであること。

ー多民族や異なる宗教をつなぐ答えが秘められていること。

 

伎楽はまさにシルクロードの縮図であり、世界の縮図なのです。

実際、文明の十字路といわれるウズベキスタンは、まさに人種や民族のクロスロードであり、一人一人の顔立ちが異なる人種の混合で、人種のるつぼの感がありました。アレクサンダー大王の東方遠征にともなったギリシア人入植以来、2300年以上の時をかけて、さまざまな民族が豊かに共存する姿に、伎楽の精神を見る思いがしました。

 

伎楽との出合い

さて、伎楽との出合いは、私自身がNYで遭遇した9.11の翌年の夏でした。シルクロードをテーマにヨーヨー・マがプロデュースした「スミソニアン・フォークロア・フェスティバル」( ワシントンDC)において、伎楽を復元した故・五世野村万之丞(本名:耕介)氏の「楽劇 真伎楽」と邂逅したのです。

その2年後に、野村氏は44歳の若さで逝去し、私はその間、アメリカから帰国する度に撮影していた氏の作品群を、写真集『萬歳楽ー大きく ゆっくり 遠くを見る:野村万之丞作品写真集』( 日本カメラ社)として上梓しました。

その後、平城京遷都1300年を記念して、大仏開眼供養会(752年)で使われた天平時代の伎楽面(重要文化財)を、東大寺から特別の許可を得て、奈良国立博物館のご協力の下、撮らせていただきました。同年には春日大社の重要文化財である舞楽面も撮影させていただきました。

伎楽面や舞楽面を眺めていると、先人たちの思いと出合えます。東西の多彩な神々や民族の王者、仙人や実在の英雄たちが “キャラクター化” された姿は、まさにギリシア的なミニチュア版「パンテオン(万神殿)」さらながら、未来への答えが見えてくる気がいたします。

伎楽も、舞楽も、シルクロード伝来の平和の使節団だったのではないか、そんな思いと出合えるのです。

 

大きく ゆっくり 遠くを見る

新年には、世界の一体性への願いを託し、五世野村万之丞氏の「大きく ゆっくり 遠くを見る」という言葉を改めて思い出しました。五世万之丞氏は、死後に八世万蔵を追贈されましたが、その野村万蔵家の家訓だそうです。

「大きく ゆっくり 遠くを見る」ことで、現在の私たちの立ち位置も変わってくるのではないでしょうか。環境問題にしろ、世界中のさまざまな紛争にしろ、未来と過去を自由に往来できる視座を身につけることで、解決に向けた意識が育まれるはずです。

伎楽面や舞楽面は “時の行者”として、そのことを教えてくれるのです。

そして「大きく ゆっくり 遠くを見る」視座には、世界への答えがあるということも____。

 

2018年正月、平和への魂からの願いをこめて

伊藤みろ メディアアートリーグ代表

(※写真は、正倉院の伎楽面が復元された江戸初期のもので、高松の旧家に所蔵されていたものです。)

(C) Text and Photo by Miro Ito / Media Art League. All Rights Reserved.

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