🔸文化芸術プロジェクトとして世界巡回中
メディアアートリーグの文化芸術プロジェクト「隠し身のしるし」「光と希望のみち」は、以下のような個別プロジェクトを包括しながら、進行中です。
• ヘレニズム文化の影響を伝える天平彫刻をはじめ、シルクロードを経て日本に伝来した伎楽面や古代アジアの王朝芸能・舞楽を紹介する、写真作品やメディア芸術(上映・動画インスタレーション)の企画制作および展覧会開催
• 1400年前に伝えられた伎楽、1500年の伝統をもつ舞楽、900年の伝統を持つ能楽の起源、古武道や舞踏までの関連性についての研究、および写真作品や展覧会の開催、ならびに映像作品の制作
• 書籍発刊やメディアでの発表
• 学術教育目的で、大学や在外公館、文化施設とのコラボレーションにより展開するレクチャーやイベントの開催
• 日本やアジアの伝統芸能から前衛舞踏までを、地球規模のパフォーミングアーツの文脈において、新しい視点で紹介するプロデュース活動(文化・教育機関やアーティスト、演者とのコラボレーション)
🔸「隠し身のしるし」(進行中)
「隠し身のしるし (Signs of the Intangible)」は、写真、メディア芸術やショートムービー、書籍にまたがる、総合的なクロスメディアプロジェクトです。当プロジェクトは、2002年から撮影を開始した映像アーカイブ (写真・動画) や独自取材、専門的な文献や資料に基づき、日本に1400年以上の間、培われてきた祈りと瞑想、奉納のかたちとして、ユーラシア源流の、日本の宗教行事や芸能に託された心体の系譜を紹介するものです。
展覧会+ショートムービー上映
企画・制作:メディアアートリーグ
- 【趣旨】身体と心の一体化を目指す「心身一如」の景観は、宇宙の根源なるエネルギーとの調和を目指して、無我の境地へと向かいながら、解脱の道として、追求されてきました。また祈りのかたちや奉納・祭りに代表される見えざる世界との「和楽(交歓)」が、芸能として発展してきました。これらの系譜を「隠し身のしるし」という観点から探り、伎楽面や舞楽などのシルクロー ドを経て伝来し、日本にのみ遺されている大陸の芸能をはじめ、修二会などの仏教法会、能楽から武道に至るまで、悟りへの「道」として心体文化を辿ります。
- -「隠し身のしるし (Signs of the Intangible) 」(2018.11.1-28) ー在シカゴ日本国総領事館開設120周年記念、日本広報文化センター (共催:メディアアートリーグ、日本カメラ財団、在シカゴ日本国総領事館、助成:東京倶楽部、後援:日本ユネスコ連盟協会、奈良県ビジターズビューロー、撮影協力:東大寺、春日大社、奈良国立博物館ほか)、シカゴ
- -「隠し身のしるし (Signs of the Intangible) 」(2018.5.25-6.27) ー日加修好90周年記念、日系文化会館 (共催:メディアアートリーグ、日本カメラ財団、日系文化会館、助成:東京倶楽部、後援:在トロント日本国総領事館、日本ユネスコ連盟協会、奈良県ビジターズビューロー、撮影協力:東大寺、春日大社、奈良国立博物館ほか)、トロント
講演・講義
- -「Signs of the Intangible – the quest for mind-body scapes in Japanese dedicatory tradition」ノースウェスタン大学(アジア言語・文化学部)主催の講義(Sponsored by North Western University /Department of Asian Cultures and Languages)(展覧会「隠し身のしるし」にちなむ/シカゴ、2018.11.16 [予定])
- -「Artist Talk」日系文化会館での講演&ショートムービー上映(展覧会「隠し身のしるし」にちなむ/トロント、2018.6.21)
著書・ポートフォリオ発表
🔸未来に捧げる「心の連帯」のためのメッセージ
1400年前の時代から未来に捧げられるメッセージは、心体という誰もが共通してもつものを通して伝えるからこそ、時空を超えて、宇宙に共生する者同志としての平等観を培いうるのではないでしょうか。人種や信条をはじめとする、さまざまな差異や相違を乗り越えうる、心の連帯を促すヒントになると信じるところです。
人と宇宙、人と人、人と万物が互いにつながり、相互に依存しあっていることへの気づきや理解を広めるめに、ユーラシアの1500年の心体文化のもつ「いかに生きるべきか」という普遍的なメッセージの有用性を焙り出します。
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※展示作品は《伊藤みろ ポートフォリオ》をご覧ください。
🔶映像作品企画・アート&学術プロジェクト
🔸「光と希望のみち」(進行中)
「光と希望のみち」は、日本に盧舍那仏が伝来した道を、奈良からインドを経てギリシア、そしてローマまで辿り、そこにみられる民族や宗教、哲学や芸術、民俗が行き交った、知られざる交流の歴史に捧げるプロジェクトです。
古代の日本は、中国大陸や朝鮮半島などアジアの隣国との交流が盛んで、710年に都となった平城京は、アジアの文化の粋を集めた開かれた国際都市でした。西の果ては地中海へと続く、ユーラシア大陸を貫く「シルクロード」を経て、ペルシアなどの国際色豊かな宝物とともに、インドからの仏教の教えが中国を経由して、数百年の時をかけて奈良まで伝来しました。
奈良は、北のステップロード、南の海路、中央のオアシスロードの三つのシルクロードの終着地です。このオアシスルートには、三つの道があり、ウズベキスタンのブハラ、サマルカンドを経て、ウルムチへ至る道 (天山北路)、新疆ウイグル自治区カシュガルからクチャ、トルファンを通る道 (天山北路)、さらにインドのカシミールから北西へと進み、アフガニスタンのバーミヤンに至る道、もしくはアフガニスタンのカブールから東へ進み、ホータンから敦煌、長安 (西安) までの道 (西域南道) がありました。
オアシスルートは、東の入り口であった敦煌で一つになり、そこから北魏王朝の雲崗 (うんこう、現在の中国山西省大同) や洛陽市龍門 (河南省) の石窟を経て、朝鮮半島、日本に至る道は「グレイトブッダロード (盧舎那仏の道) 」として、「第4のシルクロード」と呼びうるものです。
本展覧会プロジェクトでは、盧舎那仏の伝来の道を「光と希望のみち」として、シルクロードという呼び名に変わりうる、新しい文化伝搬の道としての位置づけを試みます。
※上記の世界巡回展覧会開催をきっかけに、その映像版を制作するに当たり、NYにプロジェクトNPO(Road of Light and Hope)の立ち上げを企図しています。詳細は《NY NPO活動》をご参照ください。
🔸東西文化の源流を紡ぐ「叡智のみち」
同プロジェクトでは、「叡智の道」であり「精神のシルクロード」としての「光と希望のみち」というコンセプトを提唱しています。アジアの共通の遺産としての盧舎那仏をはじめ、アジアの連帯のシンボルであり、幻の芸能である伎楽、アジアの王朝芸能の伝統を今日まで伝える舞楽などの仮面芸能、ならびにヘレニズム文化の影響を色濃く受け、天平期に花開いた彫刻文化の紹介を試みます。
もとより「宇宙の一切が関わり合っている」とする華厳哲学を体現させた盧舎那仏 (奈良・東大寺の大仏) は、偶像ではなく、釈迦自身の仏「悟り (光明) 」の姿であり、精神そのものです。同時に、宇宙・地球・万物の際限なきつながりや、すべての生命の相互依存を説く、統合のヴィジョンが図像化されたものです。そのことから「グレイトブッダロード」は、ギリシアの新プラトン主義からインド思想までの蓄積の上に、仏陀の教えが東へ西へ、南へ北へ伝えらえたユーラシア大陸の「叡智(ソフィア)の道」であり、「光のみち」と呼びうるでしょう。
「光と希望のみち=グレイトブッダロード」を経て伝えられた、「人類遺産」としての叡智と美を示していくことで、中国や韓国、中東から西アジア、果てはギリシア・ローマまで、広く世界の人々とつながり、歴史と未来との結び目を、豊かに編んでいくことができることを願っています。
🔶展覧会 2016-2017
平城京遷都1300年記念 世界巡回展覧会「光と希望のみち」
🔸2017年
2017年3月15日~6月28日
「光と希望のみち:奈良・東大寺の国宝写真展」
国際交流基金トロント日本文化センター
(共催:国際交流基金トロント、メディアアートリーグ、日本カメラ財団)
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2017年11月1日~28日
在シカゴ日本総領事館開設120周年記念「光と希望のみち:奈良・東大寺の国宝写真展」
在シカゴ日本総領事館・日本広報文化センター
(共催:在シカゴ総領事館、メディアアートリーグ、日本カメラ財団)
🔸2016年
2016年5月16~27日 NY国連本部からスタート
「光と希望のみち:東大寺盧舍那仏と天平彫刻のコスモポリタニズム」」
ニューヨーク国連本部
(共催:国連日本政府代表部、メディアアートリーグ、日本カメラ財団、撮影協力:東大寺)
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2016年10月15~25日
「光と希望のみち:悠久のコスモポリタニズム」ウズベキスタン・タシケント
(主催:ウズベキスタン芸術アカデミー・平山郁夫国際文化キャラバンサライ、日本カメラ財団、後援:在ウズベキスタン日本大使館)
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2016年11月9日~12月16日
欧州評議会 日本オブザーバー20周年記念「光と希望のみち」
ストラスブール欧州評議会 + 欧州の広場 (lieu d’Europe)
(共催:在ストラスブール日本総領事館、メディアアートリーグ、日本カメラ財団)
🔸趣旨
本展覧会プロジェクトは、日本に盧舍那仏が伝来した道を、奈良からインドを経てギリシア、そしてローマまで辿り、そこにみられる民族や宗教、哲学や芸術、民俗が行き交った、知られざる交流の歴史に捧げるプロジェクトです。
古代の日本は、中国大陸や朝鮮半島などアジアの隣国との交流が盛んで、710年に都となった平城京は、アジアの文化の粋を集めた開かれた国際都市でした。西の果ては地中海へと続く、ユーラシア大陸を貫く「シルクロード」を経て、ペルシアなどの国際色豊かな宝物とともに、インドからの仏教の教えが中国を経由して、数百年の時をかけて奈良まで伝来しました。
奈良は、北のステップロード、南の海路、中央のオアシスロードの三つのシルクロードの終着地です。このオアシスルートには、三つの道がありました。一つは、ウズベキスタンのブハラ、サマルカンドを経て、ウルムチへ至る道 (天山北路)、新疆ウイグル自治区カシュガルからクチャ、トルファンを通る道 (天山北路)、二つ目は、インドのカシミールから北西へと進み、アフガニスタンのバーミヤンに至る道、三つ目は、アフガニスタンのカブールから東へ進み、ホータンから敦煌、長安 (西安) までの道 (西域南道) がありました。
オアシスルートは、東の入り口であった敦煌で一つになり、そこから北魏王朝の雲崗 (うんこう、現在の中国山西省大同) や洛陽市龍門 (河南省) の石窟を経て、朝鮮半島、日本に至る道は「グレイトブッダロード (盧舎那仏の道) 」として、「第4のシルクロード」と呼びうるものです。
本展覧会プロジェクトでは、盧舎那仏の伝来の道を「光と希望のみち」として、シルクロードという呼び名に変わりうる、新しい文化伝搬の道としての位置づけを試みます。
🔸「ユーラシア叡智の道」
本プロジェクトは、1300年の平城京の伝統から、アジアの連帯とユーラシア大陸の平和な未来への願いを、普遍的なメッセージとして発信するプロジェクトです。
もとより「宇宙の一切が関わり合っている」とする華厳哲学を体現させた盧舎那仏 (奈良・東大寺の大仏) は、偶像ではなく、釈迦自身の仏「悟り (光明) 」の姿です。同時に、宇宙・地球・万物の際限なきつながりや、すべての生命の相互依存を説く、統合のヴィジョンが図像化されています。
「すべてが一つである」とする古代ギリシア新プラトン主義哲学と共通し、インド的な壮大な宇宙観、救済的な宗教混交をもたらした東西精神文化の交流を伴いながら、仏陀の教えが東へ西へ、南へ北へ伝えらえたユーラシア大陸の「叡智(ソフィア)の道」であり、「光の道」と呼びうるでしょう。
同プロジェクトでは、「精神文化のシルクロード」としての「光と希望のみち」というコンセプトにて、アジアの共通の遺産としての盧舎那仏をはじめ、ユーラシアの連帯のシンボルであり、幻の芸能である伎楽、海のシルクロードの王朝芸能の伝統を今日まで伝える舞楽などの仮面芸能、ならびにヘレニズム文化の影響を色濃く受け、天平期に花開いた彫刻文化の紹介を試みます。
「光と希望のみち=グレイトブッダロード」を経て伝えられた、「人類遺産」としての叡智と美を示していくことで、中国や韓国、中東から西アジア、果てはギリシア・ローマまで、広く世界の人々とつながり、歴史と未来との結び目を、豊かに編んでいくことができることを願っています。
※上記の世界巡回中の展覧会に加え、映像作品版「光と希望のみち」の制作を企図し、NYにプロジェクトNPO(Road of Light and Hope)の立ち上げを企図しています。詳細は《NY NPO活動》をご参照ください。
更新:2018年2月
🔶展覧会 2015
未来へ紡ぐ華厳の光
東大寺 国宝 日光菩薩立像・月光菩薩立像
伊藤みろ作品展示
【解説】 未来へ紡ぐ華厳の光 東大寺 国宝 日光菩薩立像・月光菩薩立像 伊藤みろ作品展示
未来へ紡ぐ華厳の光
東大寺 国宝 日光菩薩立像・月光菩薩立像
伊藤みろ作品展示
【解説】
天平文化は、盛唐からの影響を色濃く受け、7世紀後半から8世紀半ばにかけて、平城京を中心に花開きました。絶頂期を極めた玄宗皇帝時代の唐は、西は中央アジアに及ぶ、インドからシベリアの一部までの広大な地域を勢力圏として治めたことから、西域文化が豊かに融合した多彩な文化が培われました。こうした東西の交流・交易の遺産を今日に伝えるのが、東大寺や正倉院宝物の工芸品や、天平の彫刻群です。その最高峰として知られるのが、東大寺法華堂や戒壇院の尊像たちです。
天平彫刻の特徴は、隋代の影響を受けた飛鳥時代の童顔や子供のような体躯が、白鳳時代を経て、成熟した大人の理知的な姿に変化する、傑出した写実表現と生命感にまで高められた点にあります。この写実主義といのちの表現がどこから生まれたかというと、中国美術の基本をなす理念といえ、龍門奉先寺洞(現在の中国河南省、7世紀後半)を頂点とする、盛唐の仏像様式の影響が考えられます。
もとより仏像の起源は、アレキサンダー大王の東方遠征を契機に、紀元前1世紀頃にヘレニズム文化の影響を受けたガンダーラ地方で、インド文化を基盤にしながら、ギリシア的な風貌の人体像が造られ始めた時代に遡ります。ギリシア発祥の人体彫刻としての仏像は、石窟寺院や仏塔とともに、ガンダーラ(またはマトゥラー)から、中央アジア経由で東アジアへと伝播していきました。こうした流れを汲んだ東西文化の見事な融合から生まれた天平彫刻は、世界的にも、写実主義の先駆的な彫刻作品群である考えられるのではないでしょうか。
人間洞察と写実の調和
天平彫刻の目指した写実といのちの表現に適していたのが、奈良時代の仏像製作の主流となった乾漆(かんしつ)や塑土(そど)などの材料でした。インドで始まった塑土を用いる技法は、西域や中国で流行し、敦煌や麦積山(ばくせきざん)をはじめとする石窟寺院に見られるものです。
脱活乾漆像では、法華堂の本尊である不空羂索(ふくうけんさく)観音立像がその最高峰とされる一方、塑像の最高傑作は、法華堂本像背後の厨子内に安置されている秘仏・執金剛神(しつこんごうしん/しゅこうんごうしん)立像であり、同本尊の左右脇侍であった日光・月光菩薩立像です。さらに戒壇院四天王立像も、同じく塑像を代表する傑作です。
これら七体の塑像は「素材・技法・様式がほぼ完全に共通し、以前から当初一具であった可能性が論じられていた」(稲本)と指摘されています。実際に、2009年からの法華堂須弥壇(しゅみだん)修理に伴い、上記の七体は、法華堂本尊の守護神として下段周囲に安置されていたこと、また尊像構成の視点から、日光・月光菩薩はもともとは梵天・帝釈天であったことも、確実視されるようになりました。
もとより日光・月光菩薩の呼称は、江戸時代以前の文献には見られず、本尊・不空羂索観音像を塑像群七体が囲む「法華堂八角須弥壇」の群像の典拠は、『金光明最勝王経』に求められます。その「巻第七如意宝珠品」において「如意宝珠の神呪を説く観自在菩薩を先頭に、執金剛神と梵釈四天王の諸神が結集し、陀羅尼(だらに)の力でたちまちに一切の厄災が遠ざけられる」(梶本)に拠ると考えられています。
尊像としての日光・月光菩薩立像(梵天・帝釈天)の魅力を語るならば、達観したまなざしを筆頭に、思慮深さを湛えた高貴な顔立ちに加え、まるで生き写しであるかのような、微妙な表情の表現が傑出しています。こうした人間に対する深い洞察が写実の基盤となり、さらに七等身ほどの人体の自然なプロポーション、祈りの手を支える量感あふれる流麗な衣の力強さなど、すべてが崇高さと温和さの中で調和する表現の秀逸さは、粘土で作る塑像によって、可能となりました。
こうして、ギリシアを起源とする理想的写実性と生命の表現が天平の世に結実しましたが、それ以降の時代においては、彫刻材料としての塑土は、湿気の多い日本の気候に合わず、消えていきました。
人類史に遺る祈りの表現
現在、天平の国宝「塑造日光菩薩立像・月光菩薩立像」は、東大寺ミュージアムにて、木造千手観音立像(平安時代前期、重要文化財)の脇侍として安置され、神々しい光を放ち続けています。
祈りとは、より高い世界に向かい、こころを浄化して、崇高な願いや理想と一体化することだと思います。天平の世から現代、そして未来へと連なる1300年の時の流れにおいて、東大寺の日光菩薩・月光菩薩の両像は、すべてを見透かす透徹した眼差しで、祈りとともに、これからも人類を見つめ続けていくことでしょう。
「祈る人」としての人間的な所作に、この世ならぬ気高さと叡智の光が全身から醸し出され、日本の仏教彫刻における頂点をなすばかりか、祈りの表現として、普遍的かつ不朽の名作といえるのではないでしょうか。
(伊藤みろ、メディアアートリーグ代表)
主要参考文献:「奈良時代の東大寺-その造形によせて」(梶谷亮治)および「東大寺の塑像をめぐる諸問題」(稲本泰生・奈良国立博物館学芸部企画室長) /『奈良時代の東大寺』(2011年、東大寺発行)
開催期間:2015年10月7日〜9日
場所:第42回国際福祉機器展内 (東京ビックサイト)
日本ケアコミュニケーションズCSR活動展示
特別協力:東大寺
機材提供:キヤノンマーケティングジャパン、イイノメディアプロ
【解説 】未来へ継承したい 祈りの心 東大寺千手観音立像・四天王立像・厨子 聖徳みろ 作品展示
未来へ継承したい 祈りの心
東大寺千手観音立像・四天王立像・厨子
聖徳みろ 作品展示展示
【解説】
千手観音立像・四天王立像は、東大寺戒壇院千手堂に安置されている鎌倉時代の至宝です。近年では、火災(1998年)により損傷した千手堂の落慶の年(2002)、平城京遷都1300周年の2010年、および厨子の扉絵の復元が完成した2013年の3度公開されただけの、きわめて貴重な非公開の文化財です。
千手堂は、奈良時代に鑑真大和尚によって、日本で初めて仏教の授戒式が行われた戒壇院内に設けられています。戒壇院の資料によると、鎌倉時代後期、東大寺の大勧進の任じられた圓照(えんしょう)上人によって、創建されました。江戸初期に三好・松永の兵火によって焼失されたものの、30年後の慶長年間に再建されました。江戸時代の縁起には、後嵯峨院が圓照上人に下賜した二間(ふたま)観音のことが記され、千手観音のことだと推測されます。
桧(ひのき)材寄木造の十一面四十二臂(ひ)の千手観音は、金泥が全身に施された粉溜(ふんだみ)塗で、荘厳な力強さと美しさが際立った秀作です。宝相華(ほっそうげ)唐草模様の透かし彫りによる、舟型の光背(挙身光)を背負い、切金(きりかね)や緑青で彩色された蓮華座に立ち、装飾手法による金の異なる発色や、細工技法の精緻さから、尊像の神秘的な輝きが、立ち上るような重層感と同時に、空間に響き渡るかのような幽遠な深みを湛えています。
千手観音を守護する、極彩色の四天王像は、持国天と増長天が前方に配置され、後方には広目天と多聞天が配されており、一対ずつの表現にも違いが見られます。後方二天の力強さをやや抑えた表現に対して、前方二天は、躍動感が迸る描写となっています。こうした前後一対ずつの闊達とした四天王が小さく納められることで、龍や鳳凰が住まう海を背に、補陀落(ふだらく)浄土の上空に佇んで合掌する観音尊像の、衆生を漏らさず救済する慈悲と智恵の力が、比すべきものがないほど広大に描かれています。
これらの五軀は、黒漆塗の宝形(ほうぎょう)造の春日厨子に納められ、観音開きの正面扉には、南都絵師の筆により、二十八部衆と風神・雷神、両側面に密教の四大明王(左)、不動明王二童子と倶梨迦羅(くりから)竜王(右)が描かれています。
東大寺の資料によると、本尊と厨子は一具である可能性があり、四天王像も同じ制作年代と考えられ、長い間、南北朝時代の作とされていましたが、近年、鎌倉時代後期の制作であることが判明し、国の重要文化財に指定されています。
この写真作品が東大寺の特別のご厚意により、広く世界に公開でき、「未来へ継承したい祈りの心」を伝えるとともに、一人でも多くの皆様の心の癒しに役立つことを願う次第です。
聖徳みろ (伊藤みろの落款雅号)
参考文献:東大寺からの提供資料、「東大寺展」図録 (朝日新聞社、1980年)
開催期間:2014年10月1日〜3日
場所:第41回国際福祉機器展内 (東京ビックサイト)
出店主催:日本ケアコミュニケーションズCSR活動展示
協賛:NDソフトウェア
特別協力:東大寺
機材提供:キヤノンマーケティングジャパン、イイノメディアプロ
【テーマ:いのちと祈りの人類遺産 撮影:伊藤みろ】
🔶主な撮影実績
奈良の世界遺産の社寺の宝物
東大寺
【国宝】
銅造 盧舎那仏坐像
銅造 盧舎那仏蓮華座蓮弁毛彫 (蓮華像世界図)
乾漆 不空羂索観音立像 (法華堂・三月堂)
法華堂内陣
塑像 四天王立像 (戒壇院戒壇堂)
塑像 日光菩薩立像・月光菩薩立像 (東大寺ミュージアム)
二月堂礼堂
【重要文化財】
厨子入木造 千手観音立像・木造四天王立像 (戒壇院千手堂)
木造 千手観音立像 (東大寺ミュージアム)
木造 十一面観音立像 (四月堂)
銅造 聖観音立像 (東大寺ミュージアム)
伎楽面 (治道、崑崙、酔胡王、酔胡従、太孤父、迦楼羅、力士)
春日大社
【重要文化財】
舞楽面 (地久、散手、崑崙八仙、納曾利、貴徳鯉口、新鳥蘇)
【その他の貴重な文化財】
舞楽面 (貴徳人面、還城楽、陵王、抜頭、二ノ舞、胡徳楽、蘇莫者)
舞楽装束 (蘭陵王、貴徳、打毬楽、狛桙、蛮絵装束、胡蝶、東遊)
伎楽面
春日宮曼荼羅
春日鹿曼荼羅
ほか
🔶奈良の世界遺産の社寺の行事
東大寺
春日大社
興福寺
元興寺
唐招提寺
薬師寺
ほか
🔶無形世界遺産・国指定無形重要文化財
能楽
金春流シテ方
観世流シテ方
和泉流狂言方
ほか
舞楽
南都楽所
四天王寺楽所
(順不同)
※作品の一部は《伊藤みろ ポートフォリオ》をご覧ください。
🔶主な寄贈実績 I (写真作品・映像作品・書籍)
⬜️ NY公立舞台芸術図書館 (NY公立図書館)
- 伊藤みろ個展「Men at Dance — from Noh to Butoh (能から舞踏へ)」全作品55点
⬜️ 東大寺ミュージアム
- 国宝 不空羂索観音立像 および 法華堂内陣 掛け軸作品4点
- 国宝 戒壇院戒壇堂四天王立像 掛け軸作品12点
- 国宝 日光菩薩立像・月光菩薩立像(東大寺ミュージアム)掛け軸作品6点
- 重要文化財 戒壇院千手堂千手観音立像・四天王立像(厨子入)掛け軸作品6点
- 重要文化財 千手観音立像(東大寺ミュージアム)掛け軸作品1点
- 重要文化財 聖観音立像(東大寺ミュージアム)掛け軸作品1点
- 重要文化財 十一面観音立像(四月堂)掛け軸作品1点
- 重要文化財 伎楽面 掛け軸作品8点
- 映像作品「伎楽 仮面の道」(7分半)
- 映像作品「大仏さまは生きている 盧舎那仏の光の道」(7分)
⬜️ 春日大社宝物殿
- 舞楽面 掛け軸作品9点 (うち重要文化財6点)
- 映像作品 「仮面のいのち 春日大社の舞楽 若宮おん祭の舞楽」(11分)
⬜️ 日本カメラ財団
- 国宝 東大寺 盧舎那大仏坐像 掛け軸作品1点
- 国宝 東大寺 盧舎那大仏 蓮弁蓮華像世界図 作品1点
- 国宝 不空羂索観音立像 および 法華堂内陣 掛け軸作品4点
- 国宝 日光菩薩立像・月光菩薩立像(東大寺ミュージアム)掛け軸作品6点
- 重要文化財 戒壇院千手堂千手観音立像・四天王立像(厨子入)掛け軸作品6点
- 重要文化財 千手観音立像(東大寺ミュージアム)掛け軸作品1点
- 重要文化財 聖観音立像(東大寺ミュージアム)掛け軸作品1点
- 重要文化財 十一面観音立像(四月堂)掛け軸作品1点
- 重要文化財 東大寺 伎楽面 掛け軸作品8点
- 重要文化財 春日大社 舞楽面 掛け軸作品5点
- 野村万之丞作品写真展「日本楽」ならびに「真伎楽」全作品約70点
- 野村万之丞五世の肖像 (真伎楽面 崑崙とのポートレイト)
- 「Monochrome Digital Bodyscapes」全作品約30点
⬜️ NPO法人 ACT.JT
- 「仮面・楽劇・いのちー野村万之丞作品写真展」全作品約65点
⬜️ 島根文化財団
- 野村万之丞作品5点
⬜️ 奈良県立高校図書館
- 書籍『心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い』100冊
⬜️ 奈良大学
- 映像作品「伎楽 仮面の道」(7分半) :教材用として
⬜️ シカゴ大学
- 映像作品「伎楽 仮面の道」(7分半) 「仮面のいのち 春日大社の舞楽 若宮おん祭の舞楽」(11分):教材用として
⬜️ デポール大学
- 映像作品「盧舎那仏の光の道」(7分) 「伎楽 仮面の道」(7分半) :教材用として
ほか
🔶主な寄贈実績 II (デジタルデータ:文化財の保存と研究目的)
奈良の世界遺産の社寺(該当社寺への宝物および宗教行事撮影データの寄贈)
⬜️ NY公立舞台芸術図書館
- 伊藤みろ個展「Men at Dance — from Noh to Butoh (能から舞踏へ)」全作品55点
ほか
(順不同)
※作品の一部は《伊藤みろ ポートフォリオ》をご覧ください。
更新:2018年2月
協力・後援・助成(日本文化紹介プロジェクト)
🔶撮影・取材協力
東大寺、春日大社、元興寺、唐招提寺、興福寺、薬師寺、大安寺、法華寺、新薬師寺、大神神社、四天王寺、薪御能保存会、若宮おん祭保存会、奈良金春会、柳生会、萬狂言、ACT.JT、TMDネットワークほか
🔶撮影協力 (個人)
金春穂高 (能楽師 金春流シテ方)、武田志房・武田友志・武田文志 (能楽師 観世流シテ方)、故野村万之丞五世 (本名:耕介/能楽師 和泉流狂言方)、柳生新陰流21世宗家柳生延春 (故人)、22世宗家柳生耕一平厳信、室伏鴻 (舞踏家、故人) 、滑川五郎 (舞踏家、故人) 、Kik Seven、蹄ギガ、玉野黄市 (舞踏家)、春双 (舞踊家} ほか
🔶監修・編集協力
団体:東大寺、春日大社、元興寺、唐招提寺ほか
個人:森本公誠 (東大寺長老)、笠置侃一 (南都楽所楽頭・奈良大学名誉教授)、木村清孝 (東大名誉教授、鶴見大学元学長)ほか
🔶音楽提供
芝祐靖 (伎楽「行道乱声」「迦楼羅」) 、森永泰弘
🔶主催
NY公立舞台芸術図書館、キヤノングループ、平城京遷都1300年記念事業協会、奈良県、日本カメラ財団 (JCII)、TBS、日本ケアコミュニケーションズ、フランクフルト日本文化週間ほか
🔶共催
国連日本政府代表部、在ストラスブール日本総領事館、在シカゴ日本総領事館、国際交流基金トロント日本文化センター、ウズベキスタン芸術アカデミー・平山郁夫国際文化キャラバンサライ、日本カメラ財団ほか
🔶後援
在ウズベキスタン日本国大使館、在ニューヨーク日本国総領事館、平城京遷都1300年記念事業協会ほか
🔶助成
国際交流基金 (JFK Fund)
🔶機材提供
キヤノンマーケティングジャパン、イイノメディアプロ、日本カメラ博物館ほか
🔶技術協力
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 千原研究室 (2009−2010)ほか
🔶協賛
Canon USA、日本ケアコミュニケーションズ、NDソフトウェア、日本アグフアゲバルト、ドイツ東京三菱銀行 (現三菱UFJ東京銀行)、全日空ほか
(敬称略、順不同)
※作品の一部は《伊藤みろ ポートフォリオ》をご覧ください。
更新:2018年2月